それはとても晴れた日で


晴れてる方が好きだ。なぜならバイクに乗るとき気持ちいいから。
だけど雨だって別に嫌いじゃない。出かけなけりゃいいだけだ。雨が降る日はバイト先のバー
だってそんなに混まない。まぁ、別に混むような店でもないけどさ。
でもやっぱり晴れの方がいいかな。絶対行くって約束しといたチェスの試合にルルーシュを連
れていくとき雨が降ってたら絶対あいつめんどくさがるだろ?それに晴れだとたまに会長が昼
飯を誘ってくれるんだ。
俺はさ、会長が好きなんだ。ルルーシュにしか言ってないけど。

『明日は今日とは打って変わってさわやかに晴れるでしょうっ』

モニタの向こうで会長がそう言った。会長じゃない。ただの、お天気お姉さん。
気がついたら俺と会長の間にはとんでもない距離ができてしまった。卒業して、大学に行くん
だろうとすっかり信じ込んでいた。大学だってアッシュフォードの庭だ。きっとまた、いつだ
って会えるさ。その気になれば、毎日だって。
そんなふうに考えてた自分がとても恥ずかしかった。
よくルルーシュに言われるけど、本当に俺はバカだったらしい。そんなに頭のいい部類ではな
いことは知っていたけど、要領だけは昔から良かった自信があった。だけどこの人に関して俺
はまったく要領を得なかった。
なんでこんな人を好きになってしまったんだろう。

『せっかくの晴れの日曜日、気になる人をデートに誘ってみてはいかがでしょうか?』

どこのお天気お姉さんにデートの心配をされなきゃいけないのだろう。
一人呟いても、会長らしいやと笑ってしまう。
それにしても俺は一体何をやっているのだろう。
場末のバーで、いつまでバーテンしてりゃいいんだろう。
さっさと自立したくて始めたバイトだけど、いつまでもこうしていられるわけでもない。なん
てったって最上級生だ。次に行くところを決めなきゃなのに。
大学に行くのか?また親に金を出してもらって?
ルルーシュはどうするんだろう?頭いいからやっぱ大学かなぁ。誰かの下で働くってイメージ
ないもんなぁ。
二人で賭場で大儲け。
ないない。いくらなんでもそんな文字通りの博打人生は嫌だ。しかも最近ではルルーシュに悪
いことしたなって思うぐらいだ。
そういえば、ルルーシュってなんであんなに賭け事に夢中になったんだっけ?なんとなく俺は
ルルーシュの賭け好きに対して理解があったような気がしてるんだけど(まぁ俺も賭け事は好
きだ。男のロマンがあるっしょ)今ではシャーリーの悩みの種だし、ロロにだってあんまり悪
い場所を見せるのはなぁって気がする。
何のためだっけ?理由なんかないんだっけ?

「今度聞いてみればいっかぁ」

外はまだ雨が降っているようだ。
本当に晴れるのかよ、誰だって思ってしまうような雨だ。
でも晴れるんだ。会長がそういうならきっと晴れるんだ。
明日は何をしよう。きっとルルーシュはシャーリーと今度の催し物の買出しを兼ねたデートだ
ろうから、俺はまったくの暇人なわけだ。
悔しいから雨でも降ってろって大人気なく思ってしまう。

『以上!ミレイ・アッシュフォードのドキドキ天気予報でした!』

見慣れない短い髪でミレイ会長は見知った笑顔でこちらに手を振った。
ああ、いつからこんなふうに。
だけどもう嘆いても仕方ないのだ。
会長が晴れだっていうんだから晴れだ。
それに、やっとルルーシュとシャーリーが素直になれたんだ。親友の俺がこんなんでどーすん
だっての。

俺はテレビを消して席を立つ。
もう晴れたって会長が俺を昼飯に誘ってくれることはない。
だけどバイクに乗るならやっぱり晴れた日がいいだろう。

080709











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