欲しいものがある。

それは、どんな、どんな酷いに目に遭っても汚れない、二人の兄妹。
それは、けして自分が手に入れることのできない、絆。
再びまみえたとき、自分がどれだけ汚れたかわかってしまった。

怖い。


カルマ


散らばったステンドグラスの上に座り込んでいた。ルルーシュがそこにいることが信じられ
なかった。
聞かれてしまった。知られてしまった。7年前、僕が、何を起こしたのか。
君たちを守りたかったんだ。なんて。そんな言い訳、言える分けなくて、絶対、言ってはい
けない言葉で。
僕はああするしかなかった。そうじゃなきゃ日本は、ナナリーは…。

「スザク…」

肩に、ルルーシュの手がそっと置かれる気配がしたけれど、顔を上げることは出来なかった。
見ないでほしい。
ずっと子どもの頃からそう思っていた。
ルルーシュとナナリーが狙われていることを知ったときも。それを知って、行動したときも。
見ないでほしいと思った。自分が、誰かを、傷つけるところを。
どうしてだろう。僕は君たちを守りたい。心から。だけど。見られたくない。

「スザク…」

肩を揺すられても、どんなに名前を呼ばれても、顔を上げたくない。見られたくない。
僕はとても凶暴なんだ。
強くなりたかったから、それは好都合だったけれど、望んでいない、こんな力。力ですらな
い。これは本能かもしれない。
だっておかしいだろ。
だって、殺すことないだろう。
実の父親を。
だって俺は、父を憎んでなどいなかったはずだ。なのに、何故、殺したんだ。
殺すつもりなんてなかった。そんなわけない。だって俺は知っている。躊躇していたら生き
物、まして人間なんて殺せないことを。

わからない。

「スザク!」

強く叫ばれて、やっとルルーシュの顔を見た。
ルルーシュは眉をきゅっと寄せて、いつか、見たことのある、泣き顔みたいな表情をしてい
たけれど僕が振り向いた瞬間、目を逸らして空いている手で顔を隠した。

「…ナナリーのところに行こう」

珍しく弱気な声で言われて、僕は、どうしてか、笑った。
ごめん、ルルーシュ。君に見せるべき、姿じゃなかった。
そんな僕を、ルルーシュはまた心配そうに見つめたが、きっと自分がどんな顔をしているか、
わかってないんだろうな。

ごめんね。
安易に謝るとルルーシュは怒るから言わないけれど。

立ち上がって、肩に乗せられていたルルーシュの手を握って、肩から下ろす。ルルーシュは
握られたままの手から目を離していて、きっともうナナリーのことを考えてるんだろう。
だから、それでいいから、もう少し、君の心地よい冷たい手を握っていたいと、そう思った。

070624











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