3


その日、いつ夜が更けて、そして明けたのか、よくわからなかった。
あの事が起きてから、一度も眠っていなかった。実際は3日経っていたが、僕にはまだ長い
一日が終わっていないような気がしていた。
しかし、その通り、あの日以来、僕たち兄妹と母さんとの時間は終わってしまったのだ。
それに対して、僕とナナリーを置き去りにして世界はどんどん新しくなっているようだった。
何人も大臣が代わり、その下の貴族たちの爵位も代わり、俺を嫡位させようとしていた大人
たちはどこかに行ってしまった。
どうしてだ?
僕のせいなのか?
母上が死んだのは。でも父上は僕をいらないと言った。それ依然に生きてさえいないと。
じゃあなぜそんな僕のために母上が死なねばならない。ナナリーを傷つけねばならない。
誰にも言えない。

もともと、自分がいなければよかったんじゃないか、そんな、理不尽すぎる扱いを嘆くこと
もできずに。
ただ、ただ、何も守れなかった自分が悔しくて、しょうがなかった。

他の兄や姉らが僕に会いにくることはなかった。
ナナリーに会える時間はずっと傍にいた。しかし、ショックがひどいらしく、目を覚ますこ
とはなかなかなかった。
目を覚ましたとしてもうわごとを呟くぐらいで、心まで、壊れてしまったんじゃないかと、
本当に怖くなった。
だって、もし、ナナリーまで死んでしまったら、俺はもう生きていけないだろう。だって今、
こうして眠り続けるナナリーの手を握っているだけで怖いのだ。
目を覚まして。目を覚ましてナナリー。独りにしないでくれ。

おまえが死んだら、生きる理由がなくなってしまう。

そんなふうに自分がなくなってしまうのは嫌だ。怒りが止まらない。そんな自分ではいけな
い。強くなりたい。母上をあんなふうにした人間が赦せない。父も赦せない。このまま、俺
たち家族がいなくなって、なのに世界が続くなんて赦せない。
だから、そのためにナナリー…。

「絶対守るから、もう絶対悲しませないから、だから目を開けて…喋って…」

何度も何度も、その小さな手の上に涙をこぼして、願った。


















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