FUNDAMENTAL LOVE

1


絶望というものは、何度も、何度も訪れる。際限なく。

嫌な音だ。コツコツと響く音。大人が何人もこちらに近づいてくる。薄暗い廊下。色も何も
ない。
僕は待っていられなくてそいつに飛びつく。
「ナナリーは!?ナナリーはどうした!!」
医者は信じられないぐらい冷静な声で言った。
聞きなれない医療用語を淡々と述べて、カルテを見て、そしてまた喋る。
そして最後に、要約して、信じられないことを言った。
時間が止まって、頭の中がぐらりと沸いたような気がした。
「――以上です。まだICUに入っている必要がありますので面会はまだ…」
「今日は一度、宮にお戻りくださいませ」
違う男が、引き継ぐように言ったが、何も聞こえないような気がしていた。
「ルルーシュ様」
肩に伸ばされた手を振り払う。
「触るな!」
嘘だ。そんなことは絶対に嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。
執事の名前を呼ぶ。
「父上にお会いしたい…謁見を」
それを言うのがやっとだった。
自分が、どんな顔をしているのかがわからなかった。
喉の震えが忌々しい。

助けて欲しいと、思う余裕もなかったが、きっとほんの少しは期待していたのだと思う。

しかし父は、さらに、俺を絶望へと落とした。

信じられなかった。
なぜ急にこんなことになったのか。
少し前まで、クロヴィス兄様に3人で絵を書いてもらって、そうやって暮らしていたのに、
ナナリーも、俺の注意も聞かずに走り回って、転んで、母上に叱られていたではないか。
どうして。

「甘い」

地が震えるような、腹に響き渡る声で父はそう言った。そして、ナナリーを道具か物のよう
に表した。
心臓を掴まれたような気がして苦しくなった。ぎゅうっとしめつけられて、開放されたくて。
恐ろしい。恐ろしい男なのだ。
情けない声が喉の奥の方から込み上げてきて、涙で父が揺らいだ。

「ルルーシュ」

地に、響くような低い声。冷酷な瞳に見下されて。

「おまえは産まれたときから生きていたことなど一度もないのだ」

存在を否定されて、もう、いらないと、用はないと、そう告げられた。
目の前が真っ暗になった。
どうすればいいのだ。どうやって生きていけばいいのだ。
どうしてうまれたのだ。

それからどうやってそこまで辿り着いたのかはわからないが、ナナリーがいる病室の前に座
っていた。















<